いつかの花。

「まあ、楽しめよ~」


「もちろんっ」


「甘いの食べたいときは声かけてね! オススメ所を紹介してあげるから!」


「いや、もうマジでいいです」



 まだ諦めきれないのかな。



 私の苦笑は続く。



 でも、そろそろおなかがすいたなぁ……。



「まり子、そろそろ行こっか。河瀬、またね」


「河瀬君またね~」


「お、じゃあな!」



 手を振り、別れる。

 相変わらずの男友達との会話はすごく楽しかった。

 河瀬とは中学時代からの悪友。

 だからお互いに、気兼ねもないし、遠慮もしない。



 満足して、ほくほくと昇降口へ階段を下りていく。



「ケーキ何食べよっかな~」


「まり子……考え出すの早いね」


「そりゃあ、楽しみですから! 蘭花は何食べる~?」



 廊下以上に混み合っている玄関を抜ける。

 空を見上げれば、雨が降りそうで降らない感じの曇り空。


 折り畳み傘を持ってきて正解かも。



「ん~、モンブランと苺のショートは外せないよね」


「だよねっ。あとはぁ~、チョコレート系とかも!」


「うん、食べたい! 後は何だろ。フルーツの載ったケーキも食べてみよっかな」


「あ、あたしもそれ食べる!」



 好きな食べ物の話をしている時ほど楽しい時間はない。

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