いつかの花。

「じゃあ、朝とか昼とかは何て言うんですか?」


「朝は、アサゲ。昼は食べませんわ」



 食べないんだー……。

 あはは。



 乾いた笑いが顔に浮かびそうになるのを必死に堪えた。



 私、お腹持つかな……。



 ここにまり子が居たなら、『信じらんないっ! ありえないっ! 絶対無理ーっ!』くらいは叫んでいそうだ。



 私がつらつらと現代の親友を思い返している間に、湖子さんはサラサラと、また木の板に漢字を書いてくれた。

 夕餉が、ユウゲ。

 朝餉がアサゲ、なのだそうだ。



「そっか……、ありがとう、湖子さん」


「ですから……っ、はぁ、もういいですわ。蘭花様」



 諦めたように溜息をついた湖子さんには見えないように、机の下でグッとガッツポーズをした。

 努力は実ると実感できた、本日二回目の『じーん』だった。









「ご覧になってください」


「え……うわぁっ!」


< 43 / 121 >

この作品をシェア

pagetop