いつかの花。
もう二日も前になる日のことを思い出していた私の前方の山々に広がっていたのは、目にも鮮やかな紅葉の木々。
まだまだ、これからが盛りだろうけれど、今でも十二分に美しい。
目を奪われながら、ふと考える。
これがさらに美しくなったら、山に行ってみたい。
紅葉狩り、というのも面白そうだから。
ちなみに、この言葉は昨年、町内会のオバ様方が旅行の計画を立てていたのを聞いたことがあるから知っていた。
役に立つ言葉というものは、実は周囲に溢れているんだ。
こっちに来てから、そう思う機会が増えたように思う。
「きれい……」
「ふふ、もうしばらくしたら紅葉狩りに行かれてもよろしいかもしれませんわ」
にっこりと微笑んだ湖子さんは、相変わらずの可愛い系美貌を炸裂させている。
河瀬あたりが、『うお、チョー可愛い! よかったら今度遊び行かない?』っと携帯を取り出しながらナンパしそうなくらい。
「そういえば……湖子さん、そろそろ蘭花って読んで欲しいんですけれど?」
笑顔、プラス迫力といった雰囲気で湖子さんに、ここ三日ほど言い続けているお願い事をしてみた。
対して、湖子さんもにっこりとド迫力付きの笑顔。
「采女たるわたくしが蘭花様のことをそのように呼ぶことなど、とてもではありませんが、できかねますわ」
「そこをなんとか、できませんか?」