いつかの花。
『田舎についてきかれた時は、田んぼだらけの何もない所。ぐらいに言っておけば突っ込まれないわ』
『そういうものなの?』
『そういうものなの』
そうにっこり笑っていた昨夜の友人を思い出して、いまさらながらに感心した。
「よかろう、行ってきなされ。ただし、夕刻までには戻ってくるのじゃぞ」
「はい」
――と。
いきなり、私は肩をガシッと掴まれた。
犯人は、言うまでもなく、目の前の養父。
「な、なんですか、お父様……」
「蘭花よ、必ずや、湖子を連れていくのじゃぞ」
「ええと……なんでですか?」
元から私はそのつもりだった。
けれど、なぜそれを念押しされるのかが、イマイチわからない。
「迷子になってもらっては困る上、何かとわからぬことも多かろう」
「はぁ……」
「親バカと馬鹿にされても構わぬ! わしは……わしはっ、蘭花が心配なのじゃぁあああ!」
ついに、親バカ、こと、真人お父様はおいおいと盛大に泣き、袖を濡らし始めた。