いつかの花。

「ねえ、河瀬君ここに連れてくるのってできないかなぁ?」


「え、なんで私にきくの?」


「だって、蘭花は中学からの友達なんでしょ? 美味しいものはみんなで楽しく美味しく食べて、そしてみんなで幸せに!」


「う~ん……」



 頭の中で、悪友の姿を思い浮かべた。



 ……うん、無理。

 ヤツなら間違いなく逃げる。

 たとえ、首に縄つけて引きずろうとしても、スルリとそれを抜けてどこぞへトンズラするはず。



「絶対無理だと思う」


「え~、やっぱり? なら、仕方ないかな~。こーんなに美味しいのにねぇ」


「…………」



 あえて、無言を通した。



 確かにすごく美味しいけど、まり子ほど食べる女子高生なんて日本全国を探して一体何人いるんだろう。



 食後のアイスティーをちびちび飲みながら、そんなことを思ってみた。

 が、すぐにやめることにした。



 想像すると、何だかとても恐ろしいことになりそうだったから。

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