いつかの花。

 颯爽と姿を現したのは、赤色の服をゆったりと着こなした三十路前後と思われる男の人。

 朝服ではない形で、帽子も被っていない。

 左右の耳の横で、彼の黒髪が丸く結われていた。

 まるで……教科書に載っていた聖徳太子の肖像画や、古墳時代の絵に出てくる人のような髪型。

 上も下も丸くて、たとえるならば瓢箪の形。



「堤巳、久しいのぅ」

「ええ、父上こそ、ご健勝そうでなによりです」

「奥方はお元気かの?」

「ええ、ピンピンして、子供の世話をしていますよ」

「それは何よりじゃ。さ、椅子にかけなされ」

「はい」



 にこやか~に会話を交わす二人。

 確信する。

 この二人、間違いなく実父と実子だわ。

 彼らの、周りに花でも飛んでいそうなこのほわわ~んとした雰囲気は遺伝のなせる技だろう。



 そうして、椅子についたツツミさん。

 やっと私の方へ意識を向けた、とでもいうように彼はちょこっと目を丸くした。



「父上、こちらの女人は……?」


「蘭花。わしの娘じゃ」


「……失礼ながら、父上の実子ではありませんよね?」


「無論。蘭花は養女じゃよ。仲良くな、二人とも」


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