いつかの花。

 ……頭の中に、白い棒を持ちながら三角眼鏡をかけたスパルタ教師(中学時代の某英語教師)の画像が浮かんだ。

 同時に、背筋に悪寒が走る。



 スパルタだけはいや~っ!

 ……でも、堤巳兄様ってフェミニストっぽいから、女の子、しかも自分の義理の妹に対して、そんなことしないわよね。よね、よね!!

 ……そう信じたい。

 むしろ、そう信じさせてほしい。

 私の精神の平和のために。



「そこまで言われると照れるね」


「まあ、あの方々の家庭教師をなさっていたお方が何をおっしゃいますの」


「あの方々って?」


「とあるお坊ちゃんたちだよ。まあ、そのうちわかるかな」



 飄々とした様子の堤巳兄様を見て、いつの間にか悪感も鳥肌も収まっていた。

 やけににこにこしている様子は、嫌な予感がするから目を背けておくことにした。

 それは半ば、本能からの指令でもある。



「堤巳様、五日に一度の頻度でも構いませんか?」


「他ならぬ湖子殿と蘭花ちゃんの頼みだからね。それで引き受けよう」


「ありがとうございます」


「あ、ありがとうございます……」


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