いつかの花。

 駅のホームから空を見上げると、学校を出た時よりも濃い空の色が在った。



 あーあ……一雨来そう。

 うわ、やだなー。



 雨自体はそんなに嫌いではないのだけれど、雨と一緒にやってくる湿気だけは苦手だ。

 髪の毛が思うようにセットできなかったり、肌がなんとなくいやな感じになったりするから。



 これがヨーロッパの方とかだったなら、もう少しマシにもなったんだろうけどなぁ。

 恨むよ、日本の気候!

 なんでこんなに湿気だらけなのよっ!



 心の中で、見知らぬ誰かに毒づいた。

 憂鬱な気分になりながら、かばんの中をガサガサ引っ掻き回す。



 あ、傘あった。

 ラッキー!



 発見した傘を元の位置に戻して、チャックをジジッと閉めた。

 安心して、携帯を取り出していじりだす。

 待ち受け画面に流れるニューステロップ。

 日経平均がどうだとか、どこそこでまた殺人事件が起きただとか。



 明るいニュースなんてものは、取り上げられること自体が少ないんだよねぇ……。 



 いいのかそれで、と思わなくもないけれど、どうしようもないんだから、まあ仕方ない。







『まもなく、三番線に、列車が参ります。危険ですので、黄色い線の内側に下がってお待ちください。繰り返します――』



 待つこと十分。

 駅のアナウンスが流れたところで、携帯を制服のポケットにしまった。


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