いつかの花。

 堤巳兄様のキラキラ笑顔はいまだ健在だ。



 きっと、面白いことが好きな人だから、こんな状況でも笑っていられるんだろうな……。

 図太い神経に白旗あげます。

 勝とうなんてハナから思ってないけれど。



「知らないならば、教えるまで。この三日で礼儀作法については叩き込みましたが、他はわたくしでは約不足というものなのです。理解力はまあありますし、記憶力もそれほど悪くはありません」


「それはいいね。なら、やっぱり中央の常識に加えて、この時代の常識とかも叩き込めばいいのかな」


「はい、その通りです」



 どんどん話を進めていく二人。

 もう付いて行けないし、ましてやこの二人にブレーキをかけることなんて不可能だ。

 アクセルばっかり。

 ブレーキになれるのなんて……、きっと真人お父様ぐらい。

 けれど、今ここに真人お父様は居ない。

 つまりは必然的に、青信号ゴーゴー黄色でも赤でも止まらない二人と、呆然とそれを後部座席で戦々恐々としながら見守るしかない一人とが時速百四十キロほどで高速道路を走っている状況だ。



 な、なんて恐ろしい……。



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