いつかの花。
「……そうですか。四人の御子様というのは……?」
尋ねると、堤巳兄様はにこりと笑った。
向学心旺盛だというのは、すごくいいことだ、とでもいうように。
ああ、質問することって、相手を笑顔にさせるということにも繋がるんだ、と思った。
質問というのは、まずその前に相手の話をしっかりと聞いていなくてはいけないから。
そして、自分の中での疑問点を浮き出しにして、それを言葉として伝えなければならないから。
質問するというのは、悪いことでなんかはない。
そう思うと、スッと自然に、今度からもどんどん質問しよう、と思わせられた。
堤巳兄様は、やっぱりすごい人だ。
ただ一度笑っただけで、生徒に質問させることへの物怖じや躊躇いをなくさせてしまったのだから。
「四人の御子様というのは、次男の中大兄皇子様、長女の間人皇女様、三男の大海人皇子様だよ。御三方とも、聡明で気品溢れる方々でいらっしゃる」
なかのおおえのみこさま。
はしひとのひめみこさま。
おおあまのみこさま。
……知ってる。
男二人は、日本史の教科書に出てきたのを、よく覚えてる。
中大兄皇子は、大化の改新を行った人。
大海人皇子は、壬申の乱をおこした人、だ。