いつかの花。


 ……けれど、四人の御子様がいらっしゃるときいたのに、堤巳兄様は今、下の御三方しか言っていない。

 一番上の御方は、どなたなんだろう……。



「長男の御方は?」


「それがねぇ……、俺と同い年で、気さくでとてもいいやつだったんだが、何が気に入らなかったのか、急に失踪しちゃってねぇ……」


「し、失踪……。皇族なのに?」



 失踪。

 よりにもよって、天皇の長男が……。



 とてもじゃないけれど、信じられない。

 そんなことが、あっていいんだろうか?



「そう。四方八方探しても見つからないから、今では朝廷の禁忌の一つとされているんだよ」



 朝廷の禁忌。



 堤巳兄様の顔を伺うと、なんとも言えないほどに苦笑していた。

 けど、苦々しいという感じではなくて、どこか面白そうに笑っている。

 仕方ない奴だな、という感じ。



「お名前は?」


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