いつかの花。
「それに、彼の母君は蘇我馬子殿のご息女だからね……。どうしても、その繋がりを断つことはできないんだよ。馬子殿、というのはわかるかい?」
そがのうまこ。
……日本史の教科書の中で、見かけたことがある気がする……。
どこで、だったっけ……。
「ええと……聖徳太子の時代の人ですか?」
「そうだよ。それに、蘇我蝦夷殿の父君でもあり、入鹿殿とは祖父と孫の関係だね。もっとも、何年も前に亡くなっているけれど」
つまり、古人大兄皇子様の母親と、蘇我蝦夷は異母兄弟ということ。
すなわち、古人大兄皇子と入鹿とは従兄弟の間柄になる。
だから、傀儡として、入鹿は古人大兄皇子を操れる。
血の繋がりで、政治を思うがままにできるんだ……。
「けど……そんなことがあってもいいんですか? なんで誰も反対しないんですか?」
「恐れているからだよ」
恐れる?
言い方は悪いかもしれないけれど、蘇我入鹿なんて、たかが一豪族。
たかが大臣職の一人。
そんな輩が政治を思い通りにしているのを、恐れる?