いつかの花。

「それに、彼の母君は蘇我馬子殿のご息女だからね……。どうしても、その繋がりを断つことはできないんだよ。馬子殿、というのはわかるかい?」



 そがのうまこ。



 ……日本史の教科書の中で、見かけたことがある気がする……。

 どこで、だったっけ……。



「ええと……聖徳太子の時代の人ですか?」


「そうだよ。それに、蘇我蝦夷殿の父君でもあり、入鹿殿とは祖父と孫の関係だね。もっとも、何年も前に亡くなっているけれど」



 つまり、古人大兄皇子様の母親と、蘇我蝦夷は異母兄弟ということ。

 すなわち、古人大兄皇子と入鹿とは従兄弟の間柄になる。

 だから、傀儡として、入鹿は古人大兄皇子を操れる。



 血の繋がりで、政治を思うがままにできるんだ……。



「けど……そんなことがあってもいいんですか? なんで誰も反対しないんですか?」


「恐れているからだよ」



 恐れる?

 言い方は悪いかもしれないけれど、蘇我入鹿なんて、たかが一豪族。

 たかが大臣職の一人。

 そんな輩が政治を思い通りにしているのを、恐れる?


< 97 / 121 >

この作品をシェア

pagetop