いつかの花。

「入鹿殿は昨年、山背大兄王ら上宮王家の人々を自殺に追い込んだんだ」



 やましろのおおえのおう。



 なんとなく、話の流れから彼らは偉い人たちなんだと察する。



 そんな人たちを、自殺に……。

 自分の手は汚さず、相手を死に至らしめる。

 なんて、残虐なこと。

 ひどい。

 そんなことが許されるだなんて、現代じゃ信じられない。



「山背大兄王は、古人大兄皇子にとっては皇位継承するまでの難関の一つだからね。潰しておきたい、とでも思ったんだろう」


「つぶす……」


「蘭花ちゃん、それが朝廷なんだよ。醜いことばかり。綺麗ごとなんて、片手があれば足りるんだ」



 現代の政党とか、汚職とか、そんなニュースを聞いて、『政治って汚いな~』と思った。

 けれど、政治というのはいつの世でも同じ。

 相手を潰して、自らが伸し上がる。

 そうでなければ、こちらが潰される。

 それが、まつりごと。




< 98 / 121 >

この作品をシェア

pagetop