いつかの花。

「もちろん、古人大兄皇子様自身にそんな力はないからね。入鹿殿の策略だよ」


「……入鹿殿は、何をしようとしているんですか?」


「ただ、自分が偉くなったように思って、わがままをしているだけさ」



 自らのわがままのためだけ、相手を殺す。



 それが……政治家としての姿なの?

 そんなの、おかしい。



「ま、入鹿殿に対抗する勢力があるのが救いだね」



 だから……粛清が行われる。

 間違ったことを見逃す人たちばかりが、朝廷に居るわけじゃないから。



「入鹿殿はただの豪族なんだ。皇族じゃないから、皇位継承権なんてない。たとえ、自らの子を皇子と呼ばせていても、ね……」



 いくら自分を天皇のように思っていても、いくらい分が政治を操っても……。

 蘇我入鹿自身は、ただの豪族。

 天皇にはなる資格がない。



 ただの幻。

 幻は、いつか、必ず消えて、現実へと戻る。

 いつまでも幻の中に浸らせておくほど、周りは甘くない、ということ。



 それはきっと、いつの時代でも同じことだろう。



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