カラフル
「嘘でしょ?」
「嘘じゃないよ。キラキラ光って見えたよ。ドキドキしたよ。これはアレだよ。アレ。」
「マジですか。天地逆転してもそれは無いと思ってたのになぁ。」
「いや、私もないと思ってたよ。何か変な物でも食べたかなとか転んで頭打ったかなとか考えてみたりしたし。でもあっちゃったのよ。」
「こりゃ芸能人の熱愛情報より大スクープだよ。中学3年生、木場朋美に春が来たって。」
「記事にするなら情報料としていくらか取るから。」
「じゃあやめよう。」
吉本は半年前くらいまで親友の彼氏だった。
本気じゃなかったけど。
それもあってか、吉本とは結構話したり、遊んだりもしていた。でもそこには恋愛感情なんてものは一切無かった。
私は歳が近い人には興味が無くて、少し前まで付き合ってた人も歳がちょっと離れてて、それをみんなも知っていた。それが突然、同級生に、しかも親友の元カレに恋をしたのだ。大スクープだって言われるのもわからなくない。
"朋美ー‼"
登校中、私に手を振って向かってくる吉本。あのシーンが何度も頭の中で再生される。その度に私は1人で硬直して顔を赤らめる。
キラキラ。ドキドキ。鐘の音。
「なにボーッと突っ立ってんの?」
ちょうど、その再生硬直赤面タイム(勝手に名付けた)に入っている私に吉本は声をかけた。
「ふぇっ!?」
びっくりして変な声が出る。
「ふぇって何だよ。なんかの鳴き声か?」
吉本はくくくと笑っている。それを私はなんとも言えない顔をして見た。
「ってか、次の授業音楽だから教室移動だよ。遅れんぞ。」
「あっ、そうだ。」
見渡すとみんな移動していて、教室には吉本と私の二人きり。心臓が爆発しそうだ。
「もう行ったよ。俺らも早く行こうぜ。」
「う、うん。」
二人横に並んで音楽室まで歩く。いつもなら気にしない吉本ととの距離が気になって仕方がない。
(近い。近いよ吉本•••)
吉本との距離は5センチ。肩がぶつかってしまいそうで変な力が肩に入る。