秘岸花
1
あの絵を書き始めたのは、私がまだ美大生の時です。
卒業制作を作らなくてはいけないから題材を考えていたけれど何もせずにふらふらしておりました。
そうですね、ちょうど今頃の時期でしょうかね。
ヨミ、と後ろから呼ばれて振り返るとそこに在ったのは同じ科の友人でした。
美大に来る奴なんて変わったのばかりでね。彼は私の苗字と名前の頭を取って黄泉、と呼んでいました。
そして彼は私の一番親しい友人でしたから、他の者からもそれに倣ってヨミと呼ばれていたんです。
そいつは彫刻をやってまして、卒業制作に釈迦を千体彫るような特に変わった奴でして。着眼点が鋭い、というか人とは思考の回路が違うというか、とにかく面白かったので始終一緒にいて話をしていました。
彼に合図をすると、私の傍まで来て
「ヨミは何を作るか決まったか?」
と聞くので首を横に振ると、
「お前は呑気な奴だなぁ」
と笑いました。
卒業制作を作らなくてはいけないから題材を考えていたけれど何もせずにふらふらしておりました。
そうですね、ちょうど今頃の時期でしょうかね。
ヨミ、と後ろから呼ばれて振り返るとそこに在ったのは同じ科の友人でした。
美大に来る奴なんて変わったのばかりでね。彼は私の苗字と名前の頭を取って黄泉、と呼んでいました。
そして彼は私の一番親しい友人でしたから、他の者からもそれに倣ってヨミと呼ばれていたんです。
そいつは彫刻をやってまして、卒業制作に釈迦を千体彫るような特に変わった奴でして。着眼点が鋭い、というか人とは思考の回路が違うというか、とにかく面白かったので始終一緒にいて話をしていました。
彼に合図をすると、私の傍まで来て
「ヨミは何を作るか決まったか?」
と聞くので首を横に振ると、
「お前は呑気な奴だなぁ」
と笑いました。