キミだけをずっと
国際弁護士の父は海外に転勤で一年以上家を空けている。
いわゆる単身赴任ってやつ
家族の為に必死に仕事をしている父を誇りに思っていた
「あの立慶大学に受かったんだろ?おめでとう」
「ありがとう、父さん。でもそれを言いにわざわざ帰ってきたのか?」
顔を拭いていたタオルを首にかけた
「あぁ、そうだ。でもそろそろ飛行機の時間だな」
父は腕時計を見てソファーから立ち上がった
家の前にはタクシーが一台、父が来るのを待っていた
玄関の前で父が俺の肩を叩いた
「見ないうちに、男らしくなったな」
「父さんこそ」
中々笑顔を見ない父が微笑んでいた
俺は瞬きせずにその笑みを見ていた
「母さんをよろしくな、大樹」
「あぁ」
そう言って父はタクシーに乗り込んだ
父を見送った後、はぁ…とため息を尽きながら家に戻る母