恋するホイッスル☆~サッカー少年へ~
「佐野に用かい?」
「いえ、別に」
即答の翔子。
…用があるのは私だから当たり前か。
「小春、部員に渡すチョコ今貸して」
「え?」
「私と亜実子が配るから小春は裏庭に行って佐野に渡してきたら?」
「!うん」
ありがとう、と言って翔子にチョコを渡す。
包みを見て亜実子がでっか、と呟いたのは聞かなかったことにする。
そして私は、チョコを配って盛り上がっている部室からそっと出る。
佐野くんへのチョコを握って。
――――――……
相田先輩に聞いた通り裏庭に来たけど、佐野くんの姿はない。
やっぱりグラウンドかなって思ったけど、ザッザッと走る音が聞こえて音のする方へ歩く。
奥の方に佐野くんがいて、木と木の間をボールを蹴りながら縫うように走っていた。