恋涙
あたしが割れた試験管に手を伸ばして片付けようとすると…
『アヤカっ!』
そのムツキ君の声にビックリして、思わず伸ばした手を引っ込めてしまった…。
『何してんだよ。大丈夫か?ケガないか?』
そう言いながら破片を片付け始めたムツキ君。
ムツキ君に片付けてもらうなんて悪いと思ったあたしは、
『あっ。いいよ。自分でやる…。』
そう言って、再び破片に手を伸ばした。
ギュッ。
あたしの伸ばした手は、ムツキ君の手に握られていた…。
『ムツキ君?』
あたしはそう言ってムツキ君の顔を覗き込んだ。
『ケガしたら大変…。俺がやるから大丈夫だよ。』
ムツキ君はそう言い、あたしの手を離し、破片を片付け始めた。
『ありがと…。』
あたしがそうお礼を言うと、ムツキ君はニッコリ微笑んでくれた。
あたしはただただ、ムツキ君が触れた自分の手を見つめるだけだった…。