勝手にしたらいいじゃない
アスミでもだいたいの予想はしていた。
だが、彼女の目の前の女の腕や手首に色濃く鮮やかに刻まれは傷は、彼女の予想を上回っていた。その傷はあまりに生々しく痛々しい。
「私ね、リストカットしてるの」
軽くサキはその手をひらっとふって見せた。
その傷の多さと深さに圧倒されて声を失ったアスミをよそに、今度はスカートのポケットからカッターナイフを取り出した。
「…!!!サキ!何するつもりなの!?」
アスミが叫んだのを気にもせずひょいとナイフを手首に近付けた。
「こうするんだよ?」
次の瞬間。ブシュッと鈍い音がなって。サキの笑い声が聞こえた。
屋上の干からびたコンクリートに赤い液体が滴る。
「アハハ、痛ぁい。」
するとサキはまたナイフを振り上げた。アスミは反射的に立ち上がり、サキの手をつかむ。
「アスミ?」
「……。」
アスミの手は震えている。
「わかった…わかったから…見せなくてもいいよ?私、大丈夫だから…どんなことしてても…私はサキの友達だからさ。ね?」
サキが怖い気持ちを押し殺して言う。するとサキは我に帰ったように、急にナイフを足元に落とし、傷だらけの腕を抱えてしゃがみこんだ。
「サキ…。」
「ごめんね…私…時々おかしいの…突然残酷な気持ちになったり、生きてることがわからなくなるの…。ごめんね…アスミ…。」
サキの瞳から涙が零れた。