勝手にしたらいいじゃない

「サキ…。」

「アスミ、私がキモい?こんなことしてる私が…。」

「何いってんの〜関係ないよ、サキ!!大丈夫だから!」

本当は嘘。キモいとかじゃないけど、サキが怖かった。

「アスミ…絶対に誰にも言わないで?…みんなにバレたらまたいじめられる…。」

「うん、わかった。」

包帯を巻き直して血が滲まなくなったのを確認してから、二人で屋上をあとにした。


教室の前まで来ると、違うクラスのサキと別れてアスミは教室に入った。

これからどんな顔してサキに会えばいいかわからない…。

そんなことを考えていると、同じクラスの友達の綾坂友美が話しかけてきた。

「アスミん♪どったのよん?けわすぃ〜かぉしちゃってさん♪」

別名:アホのトモミんちゃん。

「べっつにぃ〜?」

アスミはにっと笑って見せた。トモミは「へぇ〜」といってポケットからカッターナイフを取り出して、プラプラと振りながら廊下でふざけながら走り回る男子共に目をやっていた。

「男子見てると動物園にいるみたいだわ。」

と呟くトモミ。全開の窓から吹く風がトモミとアスミの短めの髪を揺らす。

「…だね。」

ちょっと遅れてアスミが答えた。

固まってグループで話す女子。
ギャーギャー喚く男子。
何時も一人で本を読んでる窓際のアイツ。
窓にはりついたように外を眺めるあの子。
私の机に座ってるトモミ。
トモミの手の上でまわる…

ーーーカッターナイフ。

トモミもまた、リストカットしてるのだ。
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