コイビトは
…忙しかったわけではなく、本当にすっかり忘れていただけで、俺は恥ずかしくて仕方が無かった。


「ごめんね、今度お昼ご飯おごるから」

「じゃあ、それで」


原田さんは、くすくすと笑った。











そんなこんなで、そろそろ俺の終電の時間が来た。



一番に終電で帰るなんて、恥ずかしいけど、他に泊めてくれる人もいないし、ここに泊まるわけにもいかないからな。



駅まで、原田さんが送ってくれることになった。

俺は最初は断ったけど、(プレゼントも用意しなかったのに)来てくれて嬉しかったからと、駅まで15分ほど、二人で歩いた。



「ごめん、後片付けもしなくて」

「いいよ、来てくれただけで嬉しいの」


俺は、何度目かになる『ごめん』を彼女に告げて、彼女は何度目かになる『来てくれただけでうれしい』を返した。
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