コイビトは
思えば、彼女と二人きりになるのはこれがはじめてかもしれない。


一人で来て、帰るときは大丈夫かな、と思ったけれど、そのとき原田さんがそれを見透かしたように


「この辺は街灯も明るいから」


と言って笑った。


自分の肩より低いところにある、原田さんの顔は、お酒も少し飲んでいたみたいで、ほんのりと赤かった。





俺の地元は、こんなに街灯がないから、駅まで20分、暗いけど星がよく見えるよ、




なんてことを言おうと思ったら


「本当に、来てくれてありがとう」


彼女はうっとりとした目でつぶやくように言った。


「いや、ごめんね。本当、プレゼントも忘れて食べるだけ食べて



何しに来たんだか」



「ううん、来てくれただけで嬉しい…」



原田さんは、さっきから何度か言ったことをまた言った。

やっぱり、少し酔っているのかな。
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