【完】お前の唇、食べていい?

「そっか。一年…そんなに経つのか」



航は小学生の頃からサッカーが上手だった。



「うえーい!クラス一番乗りで高校決まりましたー!」



受験でピリピリしてる空気の中、航がアホ面で教室に飛び込んできたのを今でも覚えている。


航はサッカー推薦で県外の高校を受験し、合格。



「しほり、俺、やったぜ!」



航はそう言って自慢気に私の前の席に座って笑ってみせた。



「……でも、ちょっと寂しくなるね」



「え!?」



「ほら、航の高校県外じゃん。会えなくなるよ?」



「寂しくなるわけねーじゃん!俺ちょくちょく帰るからよ!」



航はそう言ってたけれど、サッカー推薦でサッカーが強い高校に行ったんだ。

そうそう簡単に帰れるわけもなく。


結局中学を卒業してから、航は一度も地元に帰ってきてなかった。

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