【完】お前の唇、食べていい?

神社には人が全くいなかった。

そりゃそうだよね。

今日は7日。

お参りなんてほとんどの人が済ませちゃってるもんね。


境内へと続く階段を二人で登る。

賽銭箱の前で気づいた。



「あ、財布忘れた……」



「えー…仕方ねえなあ。二人合わせて10円!これでいいだろ」



そう言って航は、自分の財布から10円を取り出した。



「よっ」



カンッ、チャリン



10円玉は賽銭箱の角に当たって、中に吸い込まれるように落ちていった。


航は二つ礼をした後、二回手を叩いた。

目を瞑って真剣に拝んでいる。


私も航の隣で目を瞑って拝んだ。



『今年の試合では、航が泣かないように、力を貸してあげてください』


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