マスカラぱんだ
**葵**
僕は、君からもらった手紙を大事にした。
君からのお礼の言葉を読み返すだけで、心が温まるのを感じる。
初めて会ったパンダの君。
痛いと泣きながら搬送された君。
そして数回だったけれど、あの特別室で一緒に過ごした時間と、僕に見せてくれた君の笑顔。
どれを思い出しても、君へのこの想いはすぐには消せそうにないと自覚した。
でも僕は、間違っても君に会いたいなどと、思ってはいけない。
だって僕は、お見合いをするから。
そんな僕が、君に会いたいと願う資格はない。
それにきっとこの縁談も、病院にとってプラスになる話のはずだ。
だったら断る理由なんて、僕にはないと思えた。
それに僕もいい歳だし。
だから僕は君への気持ちに蓋をして、手紙と一緒に引き出しの一番奥に・・・しまい込んだ。