マスカラぱんだ


**紫乃**


碧の腕を掴みながら、大股でラウンジを後にした先生の後をついて来たけれど。

いきなり私に向かって大きな声を上げた先生に、肩がビクリと跳ね上がる。


「福田さん!どうして?何で碧と一緒に?」


どうして?って、聞かれても。

先生がお見合いをして、結婚しちゃうのが嫌だから。なんて、そんな恥ずかしいこと。

口が裂けても言えない。

俯いた顔から視線だけを上げて、先生の様子をチラ見する。

私の目に映ったのは、頭を掻きながら大きな溜息を吐き出し、険しい表情を浮かべる先生の姿。

もしかして、先生。怒っているの?

私と碧が、お見合いの邪魔をしたから?


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