マスカラぱんだ
「大丈夫だよ!だからそんな泣きそうな顔すんなって!しょうがねぇな。はい。これ、あげる。」
いつにも増して、テンションが高い碧に渡されたのは707号室のカードキー。
どうして碧がカードキーを、私に渡すのか理由がわからない。
「何で?」
「俺が思うには兄貴はお見合いを断ると思うぜ。」
「どうして?」
「どうしてだと思う?それは自分で確かめて下さい。」
エレベーターが7階に着いて、ドアが開く。
私は碧に背中を押されて、エレベーターから転ぶように降りた。
「俺は用事があるから帰るわ。じゃ!」
「え?ちょっと?碧?!」
焦る私の声は、碧には届かず。
エレベーターは碧を乗せたまま、無情にもドアが閉まり、下に降りて行ってしまった。