マスカラぱんだ


**紫乃**


先生の唇は優しくて。温かで。

恥ずかしくて。嬉しくて。

そんな私を、先生はさらに優しく抱き締めてくれた。

先生の腕の中は温かくて、安心する。

なのに、先生ったらこんなことを言い出すの。


「紫乃ちゃんは、こんなおっさんの僕でいいの?」


おっさん?

私は先生をそんな風に思ったことなんか、一度もないのに。

先生は確かに私よりずっと年上の大人で、落ち着いていて、頼りがいがあって。

それを世間では、おっさんと言うの?


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