マスカラぱんだ
**葵**
君は頭では僕の仕事を理解してくれているけど、心が追いつかない。そんな表情をしていた。
今にも泣き出しそうで、不安な表情。
そんな顔をさせてしまったのは、僕。
「ごめん。紫乃ちゃん。休みが取れそうになったら連絡するし、メールも出来る限りするから。」
今すぐ抱き締めて、君をその不安の渦から救い出してあげたかったけれど。
ここは人通りがある、道路の真ん中。
こんな場所で僕は、君を抱き締めることは出来ない。
君は瞳を潤ませながら気丈にも、明るい声を上げて不甲斐ない僕を気遣ってくれる。
「うん。待ってる。だけど、葵先生?無理はしないでね?」
無理?無理をしているのは君の方だよ。
瞳から涙が零れそうになるのを必死に我慢して、無理に笑顔を作って僕に微笑みかける君。
僕に心配を掛けさせないようにするために。
君のその顔を見て、僕は決心をした。
もう、君にそんな寂しい笑顔をさせたくないから・・・。