マスカラぱんだ


**葵**


君がそんなに驚くなんて、思わなかった。

泣かせるつもりもなかったし。

でも、どうやら僕は自分でも気が付かなかったけれど、動物の中で一番パンダが好きらしい。

校門であっという間に、パンダになってしまった君を見て、また愛おしさが募ったから。

まだ涙を浮かべている君を、車の助手席に乗せてハンカチを渡す。


「いらない。また葵先生のハンカチを汚しちゃうから。鞄にティッシュが入っているはず。」


そう言って鞄を開けようとした君の手を止めて、ハンカチでパンダになってしまった顔をそっと拭う。


< 162 / 258 >

この作品をシェア

pagetop