マスカラぱんだ
**葵**
君がそんなに驚くなんて、思わなかった。
泣かせるつもりもなかったし。
でも、どうやら僕は自分でも気が付かなかったけれど、動物の中で一番パンダが好きらしい。
校門であっという間に、パンダになってしまった君を見て、また愛おしさが募ったから。
まだ涙を浮かべている君を、車の助手席に乗せてハンカチを渡す。
「いらない。また葵先生のハンカチを汚しちゃうから。鞄にティッシュが入っているはず。」
そう言って鞄を開けようとした君の手を止めて、ハンカチでパンダになってしまった顔をそっと拭う。