マスカラぱんだ


天気予報は見事的中。

雲ひとつない青空よりも、眩しい笑顔を見せる君は、文句なしに可愛い。

そんな君とのデートを、僕も心から楽しんでいた。

手を繋いで遊園地のゲートをくぐるまでは・・・。


「葵先生!アレ乗ろ!」


まさか、君が真っ先にあの、この世の物とは思えない乗り物を指さすなんて・・・。

遥か彼方まで伸びるレールが何回転もしている、いわゆる絶叫マシーン。

僕がこの世で、最も苦手としている乗り物だ。


「紫乃ちゃんは・・アレに乗りたいの?」

「うん!楽しみ!」


ああ。

またその弾ける笑顔を見せられた僕は、断るという選択肢を失う。


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