マスカラぱんだ
**葵**
充実した日々を過ごしていた時。それは、突然起きた。
産まれた時から、入退院を繰り返していたひとりの女の子。
その女の子の容態が、急変したのだ。
夜中の緊急オペに、緊張が走る。
昼間、この女の子が僕に見せていた、無邪気な笑顔が何度も頭にチラついた。
頼むから、戻って来るんだ。
そしてその、無邪気な笑顔をもう一度、両親に。みんなに。そして僕に見せてくれ。
そう願いながら、僕はオペを続けた。