マスカラぱんだ


やり切れない思いだけが、胸を埋め尽くす。

冷たくなってしまった女の子に、泣き崩れる両親の姿が、僕の目に映る。

その、あまりにも幼くて、小さすぎる亡骸は、僕の心に大きな穴を開けた。

救命救急で、今まで何度も経験した“死”。

その現実を受け入れ、乗り越えなければ、医者が務まらないことは百も承知だったのに・・・。

今の僕は、その“少女の死”を、どうしても受け入れられずにいる。

自分は、医者として失格なのではないだろうか。

そんな思いに囚われ、あんなに充実していた毎日が、呆気なく崩れていくのを実感した。

自分の無力さを痛感し、小児の辛さを初めて味わった。


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