マスカラぱんだ
「兄貴が担当だった女の子が亡くなったんだ。まだ5歳だった。」
碧と一緒に帰る時に、聞かされた話。
先生はその事実に、かなりショックを受けているみたいだから、私に励まして欲しいと、碧に言われた。
けれど、そんな自信は、私にはない。
だって、大人の先生がそんなに落ち込んでいるのに、子供の私が励ますなんて出来っこない。
そう思った。
でも、先生が心配で仕方なかった私は、大人しく碧の後を付いて行く。
電車を降り、改札を抜けると、先生の家に向かって足を進める。
豪邸の中の並木道を歩きながら、想うことはただひとつ。
私が先生のために、してあげられることって、何?
でも、何をしたら、先生が元気になってくれるのか。
私にはわからなかった。