マスカラぱんだ
**葵**
ようやく終わった。僕は手術着から白衣に着替えると急いで彼女の病室に向かう。
パンダのあの子。
福田紫乃ちゃん。高校2年生。17歳。の急性虫垂炎の手術から立て続けに急患が運ばれて来た。
本当ならもっと早く、彼女の術後の様子を見に行きたかったのに。
ん?
病室に入るとすぐに、すすり泣く声が耳に届く。
公園のベンチで嫌というほど、彼女の泣き声を聞いた僕は、すぐにこの泣き声の正体を理解した。
「福田さん?入りますよ?」
彼女のベッドに向かい、すぐに声を掛け、カーテンをそっと開ける。
やっぱり。
そこには、大きな瞳からポロポロと流れる涙を拭う彼女がいた。