マスカラぱんだ
僕は自分の腕時計を外すと、彼女の枕の横にそっと置いた。
「今は夜の11時半。この時計を置いていくから見るといい。」
「でもそれじゃあ、先生が不便でしょ?」
「大丈夫。ロッカーにもう一つ時計があるから気にしなくていい。じゃあ、おやすみ。」
「ありがとうございます。おやすみなさい。」
術後の痛みがあるはずなのに、僕が差し出した時計に気を使い、さらにお礼を口にする彼女に感心した。
そんな想いを胸に抱きながら、僕は急いでナースステーションに向かう。
少しでも早く、君の痛みを和らげてあげたくて・・・。