マスカラぱんだ
「どうぞ。」
ノックの返事を耳にして特別室のドアを開ける。
やっぱり。僕が想像していた通り、この時間は朝食だった。
ベッドの上で朝食を口に頬張っている君の姿が目に飛び込む。
君は僕に気が付くと箸とお茶碗を持っていた手を下ろし、口の中に入っていた朝食をゴクリと飲み込む。
ああ。そんなに急いで飲み込まなくても良かったのに。
第一、食べ物を良く噛むということは健康のためにとてもいいことで。
そんな説教染みたことをまた、君に言ってしまいそうになった僕は、慌ててその言葉をのみ込む。
そもそも、君の食事を中断させてしまったのは、突然姿を現した僕のせいなのに。
「先生?!」
「ごめんね。朝早くから。」
「いいえ。あ。先生。おはようございます。」
「おはよう。福田さん。僕に構わず食べて。」
「はい。」