マスカラぱんだ
**葵**
一緒に食事だなんてつい、妄想してしまった自分が恥ずかしい。
だって君は17歳。
君から見たら僕はもう、おっさんだよな?
そんな恥ずかしい想いを、自分の胸に必死に閉じ込める。
それでもせめてもう一度。
美味しそうに食事をする君の姿を目に焼き付けたいと願い、顔を上げた。その時。
ベッドから身を乗り出している君に、初めて気が付いた。
「福田さん!何しているんだ?」
「え?だって先生の様子が変・・・キャッ!」
危ない!!
すべてがスローモーションのように僕の目に映る。
君はベッドのテーブルに付いていた手を滑らせ、肩から床に落ちようとしていた。
テーブルの上で跳ねあがるトレイ。
その衝撃で君が美味しそうに口にしていた朝食が、派手な音を立てて床に飛び散らかる。
どうか、間に会ってくれ!
急いでソファから駆け出すと、ベッドから落ちそうになった君の身体をなんとか支える。
僕はまだ、自分の鈍っていない反射神経に感謝をした。