マスカラぱんだ
「大丈夫。そんなに傷口は開いていないから。安心して。」
そう言って、私を安心させるために少しだけ微笑みを浮かべた先生の表情は、立派なお医者様だった。
先生はいつだって冷静な大人な対応をする。
今だって一番に、患者の私のこの身体を気遣ってくれた。
それなのに私は、先生をイヤラシイと疑ってしまった。
血が滲んだ傷口の痛みなんか感じない。
私が感じるのは、この胸の痛さだけ。
「ごめんなさい。先生。ごめんなさい。」
こんな子供染みた私が唯一出来ることは、これだけ。
私は何度も何度も、先生に謝り続けた。