マスカラぱんだ
**葵**
謝るのは僕の方だ。
君に会いたい思いのまま、無理にこの特別室に来てしまった。
その結果が君に心配を掛け、君をこんな危ない目に遭わせてしまった。
塞ぎかけた傷口から滲んだ血液と『ごめんなさい。』を繰り返しながら大粒の涙を流す君を見て僕は後悔した。
自分の取った行動は間違いだったと。
君は患者で、僕は君の手術をした、ただの医者。
少しでも君に会いたいと、思ってしまったことを深く恥じた。
それでも今は処置の方が先だ。
僕は気を引き締めると、ナースコールを押して指示を出した。