マスカラぱんだ


もう。こうするしかないと思った。

休み時間に碧の教室まで押し掛け、ドアからキョロキョロと中を覗く。

そんな私の姿に気付いた碧は、椅子から立ち上がると、教室から出て来てくれた。


「福田が俺に何の用?」

「お願い。これを先生に渡して欲しいの。」


私は碧に一気に詰め寄り、お店で綺麗にラッピングしてもらった袋を差し出す。

お礼の品を用意したのはいいけれど、どうやって先生に渡すのかちっとも考えていなかった私。

本当は先生に会って渡したい。

でも、病院に押し掛ける勇気はない。

それに先生は、私からお礼をもらっても、迷惑なだけかもしれないし。

そんな弱気な想いに心が支配された。


< 98 / 258 >

この作品をシェア

pagetop