想い出の宝箱




朝起きると病室には誰もいなかった



誰かいると思ったけれど

まだ来ていないようだ




昨日はたくさん泣いたから目がはれている



顔を洗いに行こうと傷だらけの体を

無理やり起こし病室を出た




廊下には何人か看護婦さんがいた


みんな私を見て何か話している


耳を澄ませると


「あの子の彼氏、あの子を助けようとして
意識不明なんだって」

「嘘、かわいそう」


なんて同情でしかない言葉が降り注ぐ



嫌になって私は痛む体を必死に動かし歩いた



すると目の前に


集中治療室が見えた



< 160 / 374 >

この作品をシェア

pagetop