想い出の宝箱
私が何か喋ろうと
必死に考えていると
いつも自信ありげな翔太が
蚊の泣くような声で
話し始めた
「なぁ?なんで俺じゃなくて
竜也なわけ?」
「いやぁー私もあんまり
覚えてなくってさ」
「好きな奴って竜也?」
「違う!!竜也じゃ・・・」
一瞬「翔太が好き」って
言いそうになって
慌てて口を閉じた
「やっぱそうじゃん
実際は竜也のこと好きなんだろ?
それに広瀬って呼んでたくせに
竜也になってるし」
翔太もどんどん
口調を荒げていった
怖い・・
「違う!!・・好きじゃないもん
下の名前で呼ぶようになったのは
今日のお礼っていうか・・」
「じゃあ誰が好きなの?」
「誰って・・・」
まっすぐと私を見る翔太の目が
怖かった
前はその優しい目を見ると
安心して笑顔になれたのに
今はその目を見ても
寂しいとしか感じなかった