想い出の宝箱





「彩・・・?」


彩は俺に気付いて
一瞬体を強張らせた

そしてすぐに顔を下に向けてしまった

「なんで、お前学校来ないんだよ」


「・・・・」


彩の返事はない


「みんな心配してんだぞ」

「・・・・」


「おい!!」


何を言っても
返事をしてくれなかったから
無理やり顔を上げさせて
目を合わせた




「え・・・」

彩は泣いていた


顔をゆがませながら泣くのは
何回か見たことがあるけど


彩は静かに無表情のまま泣いていた



「しょう・・・た」

小さな弱った声で彩は俺の名前を呼んだ

俺はこの声を聞き逃さないよう
彩に近づいて聞いた



「思い出せないの?」

「なにが・・?」





< 353 / 374 >

この作品をシェア

pagetop