想い出の宝箱
「崖についてやっと
彩が大事だってことにも気づいた
落ちていく彩の顔も
一瞬にして思いだした
あの手が離れる瞬間の
感覚も思いだした」
手が離れる瞬間・・
思いだすたび
ゾッとする
その私の顔を見てか
「思いださせてごめんな」と
私の肩を引き寄せた
「そしたら、『彩を守る』って
信念も思いだして
あの階段の事故に記憶がつながった」
階段・・・翔太が記憶を失った場所
「思いだしたとき怖かった?」
「怖かったよ
自分はあそこから記憶がなくなって
いたって分かって
だけど、やっぱり彩につらい思いさせてた
ことが一番怖かったな」
「やっぱり翔太は優しいね
自分のことよりも私のことを
考えてくれる」
「当たり前だろ」
そう言って翔太は
思いっきり私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた