想い出の宝箱
「おい、まだかよ」
玄関から翔太が顔をのぞかせている
「だって、灯里がー・・・」
「ママ、パパ行こう!」
さっきまで服が着れないとか言って
ぐずっていたのに
笑顔で私たちの方へ走ってきた
そして、私たち2人の手をとって
力強く引っ張り走り出した
あぁ、この子ちゃんと生きてるんだ
ちょっと前まで何かできないと
ずっとぐずってたのに・・・
「ねぇ、おべんとうにタコさんいれた?」
今日はみんなでピクニックに行く日だ
「入れたよ」
そう答えると灯里は笑顔になった
灯里の笑顔につられて私と翔太も笑顔になる
この瀬川家には
小さいけど温かい優しい明かりがある
私たちはその明かりを守ると決めた
私ももう守られる側じゃない
守る側なんだ
この子の母親なんだ
いつの日かこの子にも
守ってくれる人が現れることを
願いながら私たちは笑顔で生きていく