想い出の宝箱



だから、
俺は歯止めが利かなくなった


彩を抱きしめていた




彩は一瞬驚いたがまた、
肩を震わし声を抑えて


泣いていた



俺だったら、
こんな思いさせないのに


いろいろ考えていると


腕の中から彩が

「広瀬?」

と困ったように呟いた



その瞬間俺は
我に返って彩を離した



そして

「あ、今抱きしめたのは
彩の涙が止まるようにだから」


なんておどけてごまかした



でも、
こんなことしちゃだめだった

彩のまだ元気のない笑顔を見て


彩には好きな人がいるのに
俺はむりやりその想いを
つぶそうとしていたことに気づいた




やっぱり、
彩が俺を好きに
なってくれるように

気長に頑張ろうと思った






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