君色デイズ
「……うん。それで、奥様は玲子(れいこ)様。旦那様と一緒にお仕事で各地を回るから、あまりお家にはいらっしゃらないけれど。」
「奥様は玲子様ね。……ねぇ。子供さんって、いるの?」
「ええ、いるわ。景雅(けいが)様っていうご子息が。確か、16歳だったかしら。」
「へぇ。」
玲子奥様と、ご子息の景雅様。
会ったこともないのに、名前を聞いただけでこんなに緊張してくるなんて。
「……ほら、ユリ。もう着くわ。」
緊張で握りしめていた両拳から、ヨシ姉に促されるまま流れる車窓へと視線を映す。
すると目に映ったのは、まるで同じ世界にあるとは思えないほどの、豪邸……否、城、というべきか。
とりあえず本当に、目を疑うほど大きな家が、今、あたしが向かう先にあった。