君色デイズ

「え、もしかして、あの家?」

「そうよ。」


まるで何てことないとでも言うように、ヨシ姉はさらりとそう答えるけれど。

タクシーを降り、その城を目の前にして、また思う。

…――この城の持ち主は、一体どこの貴族ですか、と。


「ほら、ユリ。そんなところに立ち尽くしてないで、早く行くわよ。」

「……え? あぁ、うん。」


ぼけっと見とれている暇なく、ヨシ姉に引かれるがまま豪華な門を通り抜け、壮大な敷地に足を踏み入れる。

そして荘厳な屋敷にびくつきながら中に入れば、やっぱりどこぞの城としか思えない内装に、言葉なんて出てこなかった。

ただ、思うことはたったひとつ。

明らかにここは、貧乏人のあたしには場違いな場所である、と。

こんな機会がなかったのなら、一生、それこそ死んでもなお、あたしには無縁の場所であっただろうと思えるほどに。
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